2011/04/11

高円寺反原発デモの報道と反応に思う

 4/10日曜日の東京、高円寺で反原発のデモがあった。
twitter等での呼びかけで拡散し、規模は拡大、15000人以上の人が集まった。
構成員としては左翼団体や労組でなく、一般の若者が多く、雰囲気はカジュアル&ファッショナブルでちょっとしたレイブパーティーのような趣。年代は若者が中心だが、老若男女様々な層が集まっていたようだ。


 上のムービーをみれば分るが、サウンドシステムとDJを乗せた車がゆっくりと公道を練り歩き、それに連なるデモ参加者は各自用意した色とりどりのアンチ原子力プラカード、レゲエフラッグなどを振りかざし、テクノビートに揺られながら「原発いらない」とコールしている。警官が必死に制止をしている。見慣れない風景だ。



 不思議なことに警官隊とデモ隊との衝突といったことは起こらず、大量に動員された警察官たちは機敏にデモ隊の流れをさばき、信号システムや交通にそれほど過大な影響は及ぼさなかった模様。
あたかもコンサート会場の警備員のように興奮する客の動きを冷静に制御することに徹しているような印象だ。

 ソーシャルメディアでの反応はおおむね二つに分かれていて、我々のエネルギーとして意思表示できたのはいいことだというポジティブな論調と、若者の遊びであって、こんなから騒ぎが何の意味があるのかというネガティブな意見だ。
そして、ポジティブ派は「マスコミはこのデモを報道しない。各地に飛び火するのを恐れているのだ」といったシニカルな意見も多いようだ。

 このデモの報道具合を見ていると確かに主要なマスメディアには、ほとんど取り挙げられていない。
NHKでは「各地で原発反対デモがあり、都心でも銀座でデモがあり、2000人が参加した模様」と、圧倒的に規模の大きい高円寺デモを故意に報道していない。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110410/k10015213681000.html

東日本大震災で深刻な事態に陥っている福島第一原子力発電所の事故を受けて、エネルギー政策を転換し、すべての原発の運転をやめるよう訴えるデモ行進が東京の都心で行われました。
デモ行進は、全国各地で原発に反対する活動などをしている8つの市民団体の呼びかけで行われ、主催者によりますと、およそ2000人が参加しました。はじめに港区の公園で集会が開かれ、代表者が「福島原発の事故を契機としてエネルギー政策を転換し、すべての原発を廃止するよう求めていきましょう」と呼びかけました。そのあと、参加者たちは「原発はいらない」という横断幕を掲げながら、東京の都心を4キロ余りにわたって行進しました。

 一方、日本のマスコミでは唯一、日テレ系列で以下のように高円寺デモを取り上げた。
http://www.ytv.co.jp/press/mainnews/180563.html
福島第一原発事故を受け、各地で10日、反対デモが行われた。
東京・杉並区では10日午後、リサイクルショップの店主らの呼びかけで、「高円寺・原発やめろデモ」と題して行われた。簡易投稿サイト「ツイッター」などで参加が広がり、若者を中心に多くの人が集まった。
デモを主催したリサイクルショップ「素人の乱」の店長・松本哉さんは、「こっちもびっくり。こんなに人が集まって…。原発が危ないとわかったので、一刻も(早く)全部止めていただきたい」と話した。

 海外メディアではBBC、アルジャジーラ、CBC(カナダ国営放送)など様々なメディアが取材。
CBCのニュースはこちらで、高円寺の写真も多数アップされている。
3/27の銀座のデモの様子はBBCのニュースで報じられているが、高円寺のものはまだ確認できていない。
Anti-nuclear protests in Japan
共同ニュースも海外向けの記事をアップしている。
17,500 gather for Tokyo rallies against nuclear plants



 私のタイムラインに流れてきたツイートではっとする意見があった。
@87a_wtnbさんのツイートだ。


”デモを日本の報道が扱わない事は今に始まったことじゃない。逆にデモは日本人が思っている以上に欧米に強く語りかける力を持つと思う。元々外来の手法なのだ。そして今日本には欧米メディアの守護が必要だ。この状態を続け、日本らしいデモの形を見つけ次第に日本人にも理解してもらうのがいいと思う。”


 確かに、そうなのだ。こんなに多くの人、若者、子供を抱えたお母さん、おじいさん、職業も年齢もばらばらな普通の人が自分の意思で集まったのだ。
今までの平和団体系のデモや、労組系のデモと違って組織化されることなく、自発的な意思で。
ここには、明らかに、これまでの日本のデモと違った何かがある。各自のスタイルは様々だ。だけども行き場のない「想い」を15000人が集合的に表現したのだ。
ひょとしたら画期的なことなのではないか。
海外のメディアがこれを取り上げるのは、見えにくい日本人の民意を取り上げようとしたからだと思う。
日本の首脳層の硬直、無能ぶりが海外に報道されることが多い中、一般の日本人の民意を伝えるニュースは海外のメディア環境の中でもいつものフレームとは違う、原発に対する日本人の民意の一側面を伝えるという点で意味があったと思う。

 レイブ的なスタイルをとっているが、このエネルギーは何かに似ているものがある。
それは幕末の「ええじゃないか」ムーブメントだ。
日本人が意思を表現するとしたらそれは「祭り」という形なのだ。
しかし、現代において明らかに違うものもある。このページでデモの告知をしているのだが、
まず、「超巨大反原発ロックフェスデモ in 高円寺」というコンセプトで訴求されている。
また、デモのやり方ってどうやるの?ってことに対して、隊列の組み方、過去の海外事例ムービーなどを解説している。
つまり、デモというのは市民コミュニケーションのひとつの形であり、それを楽しみながら学んでいこうという姿勢だ。
恐らく、高円寺デモで初めてデモに参加したという人も多かったのではないか。しかし、レイブ的な祭りノリがありつつも、それが完全なカオスに陥らず、警官隊、一般市民との棲み分けが一応実現していたというのはなんらかの「デモの作法」が共有されていたからだろう。

 もちろんデモだけが、民意を表現する手段だとは思わない。広告コミュニケーションでいえば、それは「認知」の段階であり、これから、「比較、理解、行動、共有」を各自のプロセスの中でやっていけばいいと思う。
ある人はNPOを立ち上げるということになるかもしれないし、ある人はNPOに募金をするという行動になるかもしれない。
江戸時代の「ええじゃないか」と違うのは、ソーシャルな市民コミュニケーションの一つのプロセスとして、デモが割と冷静に各自に認識されていることであり、また、それぞれの現場でそのエネルギーを形にしていくアクションプランにも結び付いていくベクトルがあるということだ。
日本における市民運動とは「祭り」の形を取りながら、「冷静と情熱のあいだ」をすり抜けていくようなバランスにあるのではないかと思った。
欧米のパブリックとはまたちがった、パブリック。日本人の身体性に合うパブリックを作り上げていくタイムラインがスタートしていると、「原発いらない」のビートを聴きながら思う。

6 件のコメント:

  1. すごい盛り上がりでしたね!
    ちなみにツイッターで出回ってる映像の

    http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12874198の
    BBCのニュースは3月27日の銀座デモです

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  2. 素晴らしい記事ありがとうございました。昨日私も参加しましたが、まさに初めての参加。純粋に熱気に驚きました。昨日今日のニュースでほとんど報じられず、あんなにたくさんの人が集まったのになあ、、、悪いことをしたのかなあ、、、と困惑しておりました。ここまで来ると原発ってそんなに悪くないのか、、、なんて思っていました。特にパンクなムーブメントや、アナーキズムに興味はなく、正しいことに参加するような義務感に似た気持ちで参加しましたので。私のような素人、原発の恐ろしさを知らなかったバカモノなので、反対していくことに意味はないのかと思ってしまいました。

    海外メディアで報じられたというのを知り、少しは意味があったことを願っています。滝澤様のように系統立てて記事にしていただくと、気持ちの整理をすることが出来ました。とりあえず何かやる、やらないよりはいい!そんな気持ちで今後も反原発運動に参加していこうと思います。

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  3. BBCの放映は3月の銀座デモですよ〜〜!両方行ってるのよくわかります〜〜!

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  4. BBCのニュースは主に銀座デモに関してで、まだ高円寺のはアップされていない模様です。失礼しました。
    http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12874198

    CBCのニュースクルーが高円寺でレポートする映像を見つけました。取材後アップされたかはまだ不明です。
    http://www.youtube.com/watch?v=iDiHH3IVj6M

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  5. 参加された方のコメント、ありがとうございました。
    私は所用があり参加できず、twitter等で追いかけるのみでしたが、熱気が伝わってきました。実際に参加された時に感じられたフィーリングは貴重なものだと思います。
    体験された方の何か変わるかも知れないという想いは、次のアクションにつながっていくと思いますよ。

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  6. CBC(カナダ国営放送)でデモの様子がレポートされました。
    高円寺の写真も多数掲載されています。
    http://www.cbc.ca/news/world/story/2011/04/10/japan-kan-protests.html

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