2012/05/10

ジオと神話の旅・霧島 その二 ー御池ー


52日、ジオガール撮影の日。午前九時に都城のホテルを出て最初の撮影地「御池」に向かう。
天候は曇。45号線を北西に向かい、霧島がだんだん近づいてくる。低く垂れこめた雲と畑の間に
青い軀体が広がっている。






























車は山間部に入り、沢沿いに点在する集落のあいだを進む。このあたりの集落は外壁に板を張っている。
どことなく隠れ里的な雰囲気が漂う。






























突然、大粒の雨が降ってきた。一瞬であたりはざあーっと土砂降りのホワイトノイズに包まれる。
運転するフォトグラファーS氏は、撮影ができるかどうか心配している様子。
しばらく車を進めると、どういうことか、雨は弱まり、そして止んだ。
どうやら15分ほどの移動区域だけ、雨は激しく降っていたようだ。フォトグラファーS氏は地元・都城の隣の曽於市出身だが、「このあたりではよくあることなんです。山の麓では場所によって雨が降ったり止んだりしています」と言う。
霧島連山の麓の地形と連動した微気象が多数発生しているということか。なんだかわくわくした。



撮影目的地の御池に着いた。御池は4500年前の火山の水蒸気爆発で出来た火口湖。
爆裂した火口に水が溜りそのまま、円い湖となった。

都城出身の撮影スタッフのヘアメイクのMさんは子供の時よくここにキャンプに来ていたという。
朽ちかけたボート乗り場があってスワンが並んでいる。
四件ほど食堂が並んでいるが永らく使われている様子はないようで、一軒は取り壊し作業が進んでいる。
目の前に広がる風景は素晴らしい。御池が円いカーブを描き、周囲は深い森に覆われている。
森は火口のフリンジ部分に生い茂っており、低くゆるやかな曲線が続いている。
向こう岸の森の縁の奥には、正面左上に伸びる尾根があり、その端は雲の中に消えていく。
この尾根は高千穂岳につながる山脈らしい。霧島連峰から最右翼として都城盆地に突き出している。山腹には霧島東神社があり、これは霧島六社権現のひとつとなっている。



撮影本番の時間が近づいた。天気は快方に向かい、やわらかい太陽が湖に光を落とし、
キラキラと水面が輝いている。高千穂岳もその姿を目前に露した。最高の撮影日和だ。
































天気が回復したせいか、ちらほら釣り人が現れだし、湖面に長い竿を突き出し仕掛けを
設置し始めている。
少しカメラの視界に入ってしまうところに釣り人が陣取ったようだった。
5分だけ待ってもらえないかお願いしてみよう。
私は釣り人のおじさんに近づき、話しかけた。

「こんにちは、いい天気になりましたね。何を釣っているんですか?」
「ニジマスだよ」
「ブラックバスばかりと聞いていたんですが、ニジマスいるんですね」
「ここらに入る川は水が綺麗だから御池も水が綺麗なんだよ」
「へえ、そうなんですね…。ところで、少し撮影をしたいのでちょっとだけ竿を
動かしてもらっても大丈夫でしょうか?」
「いいよ、にいちゃんたちも大変だね」
「いえいえ、本当にすみません」
「おっ!」
「かかりましたか!」
「うん」






























引き上げたのは30センチぐらいのニジマスだった。結構、大きい。

おじさんは地元の方でよく釣りにここに来るらしい。フォトグラファーS氏が話すには、
「向こう岸に見える縁の黒いところ、あそこにここのヌシがいますよ」ということだ。


湖を見渡すと、水面は太陽を反射して白く光るが、一部分黒く伸びる帯がある。
そこは他より深いところで、光が水中の地形に反射し、その深さによって水面の色が白と黒に分かれてゾーンができるらしい。
最深部では93.5mあるとのこと。相当、深い。
どくろを巻くその底知れぬ黒い帯に神秘の念を抱くとと共に、
三角形の台形の姿をうっすらと霧の中に現しはじめた高千穂岳に、
何やら知れぬ奥行きの深さを感じた。































この湖、御池の向こう岸の、高千穂につづく尾根に背骨上にある霧島東神社。
そこに参拝しに参りたいと思った。




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