2012/05/06

ジオと神話の旅・霧島 その一 ー霧島へー



ゴールデンウィークの最初の連休の三日目、15時の鹿児島行きの飛行機に乗った。
東京から1時間40分の空路。
飛行機が高度を下げ、曇天の層を抜け、鹿児島空港への最終着陸態勢に入ったその時、
窓の外に、黒く広がる大きな山塊が見えた。
手前に鋭い山。幾層もの黒い山筋が連なり、奥の方は白いもやがかかっている。
黒い山の山頂を覆う水蒸気は、雲なのか霧なのか区別付け難く混ざり合っている。
それが、霧島との最初の出会いだった。






























鹿児島空港から高速バスで都城へ。
霧島連山の北側の麓をぐるっと時計回りに西側へ周り、一時間半で都城に着く。
照葉樹林帯に位置する南九州の森はシイやカシが開花期を迎え、竹の新緑が揺れている。
それらはゴールデンパウダーを振りかけたように山々を彩っている。
関東では見られない風景だ。

バスは霧島連山に近づいたり離れたりするが、上の方は雲に隠れており、
なかなかその全貌のスケールが掴めなない。
連山の裾ののスカートは大きくなだらかに広がっており、ふくよかで豊かな感じがする。
その広がりにまず感動した。



























都城の駅前のホテルにチェックインし、撮影スタッフとのミーティングを宿泊ルームで行う。
今回は”ジオガール”というテーマでネイチャー・ファッションを撮影する。
霧島は火山が地質学的に貴重で、自然・文化遺産として「日本ジオパーク」に認定されている。
霧島ジオのランドスケープと融合したモデルを撮影しようという試みで、
女性像として”クマソの女”という設定についてスタッフと話した。

「クマソ」は古事記、日本書紀に「熊襲」「熊曾」として登場する、南九州の部族。
彼らは天皇を中心とする政権・大和朝廷から見ると日本の先住民族で、
制圧され滅ぼされた古代の部族だ。

この「クマソ」という存在が気になった。
その後、鹿児島を中心とする南九州では「隼人」と呼ばれる部族が歴史に登場し、
そこから出た島津家は、独自の勢力を時の中央政権に常に保ち、
ついには日本を変える原動力となり、明治維新を起こし、現在の日本がある。

そんな歴史と、もうひとつ、古事記に登場する「天孫降臨」の神話がある。
ニニギノミコトが高千穂に降臨したという話だが、霧島連山の中の高千穂岳がその地とされている。
古事記では、ニニギノミコトはアマテラスオオミカミの孫にあたり、その後の天皇家の祖先となる。
高千穂岳の頂上には「天の先鉾」が突き刺さっており、坂本竜馬が引きぬいたエピソードがある。
先史時代に神が天降った場所としては、霧島の火山は神が降りるヒモロギのような形をしており、
リアリティを感じるものがある。

天から降りたった天津神に対して、霧島と高千穂は国土を司る国津神が生きる神域であり、
その地の先住部族の「クマソ」は土地の象徴なのではないかと思った。
天から突き刺さる鉾に対して、受け止める霧島全体の山々のゆったりと広がる裾野は、
まるで皿のようだ。
その大地に生きるクマソの女は神を受け入れるシャーマンのような存在なのだろうか?
そんな話題で夜が更けた。


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